男性の育児休業取得義務化―少子化対策の追い風に
こんにちは、広島市議会議員(安佐南区)のむくぎ太一(椋木太一)です。
私は、「子育て・人づくり」を政治活動の柱の一つに掲げ、広島市における育児休業取得の促進を目指しております。そんな駆け出しの地方議員にとって、6月5日、「追い風が吹き始めた」と感じる出来事がありました。
男性の育児休暇取得を企業に義務付けることを目指し、自由民主党の有志議員による議員連盟が発足したのです。これは、少子化対策につながるであろう、とても貴重な一歩だと思います。議員としてだけではなく、読売新聞記者時代に1年間の育児休業を取得させていただいた「育休経験者」としても、大きな期待感を抱いています。
とはいえ、現実的には、企業は厳しい経営環境のもと、ギリギリの人手でやりくりしており、育児休業取得が義務化されることには困難が伴うことでしょう。内閣府などの調査では、男性が育児休業を取らない(取れない)理由に、「(取得を)言い出しづらい雰囲気がある」「人手不足で取りづらい」「育児休業制度が未整備」といったことが挙がっています。私自身、育児休業を取得していたことを企業関係者らに話すと、「小さい会社だから、社員が育休を取ることすら考えていられない」「そもそも、有給すらすべて消化できていないのに、育休なんて夢のまた夢」といった声をいただきました。
だからといって、手をこまぬいているわけにはいきません。確かに、「義務化」というと強烈なイメージがあります。しかし、この言葉は、少子化対策が直面する現実の厳しさの裏返しなのだと受け取りました。先日、厚生労働省が発表した、2018年度の男性の育児休業取得率は6・16%でした。前年度比約1ポイント増とはいえ、政府目標が2020年で13%ですから、半分にも到達していません。繰り返しになりますが、「義務化」と表現するのは、そこまで強力にやらなければ、少子化はのっぴきならない状態にあるというメッセージなのです。
また、育休経験者だからこそ、男性の育児休業取得を強く主張したいと思います。実際、育児休業中は生活が苦しくなることもあります。無給となる育児休業中は育児休業給付金が支払われますが、最初の6か月間は給料の67%、その後は50%と、十分満足な額とはいえないためです。ただ、代えがたいものも手にできます。生まれたての子どもが描く成長曲線は、40歳すぎた大人のそれとはまったく比べ物になりません。一番間近でわが子の成長を見守ることは、親子ともに大きな財産になります。ここは強調したいと思います。さらに、母親にとってもプラスに働くことは多いのです。産後の母親は心身ともに大きなダメージを負っています。「交通事故に遭ったぐらいのダメージ」と表現する専門家もいるぐらいです。父親が育児休業を取得することで、母親が子育てに伴う苦痛や悩みを一人で背負い込むリスクを回避しやすくなると思いますし、父親が母子の支えになることは、家族として当然だと思います。家族がしっかり結びついてこそ、社会が安定すると考えるからです。
都市部に比べ、地方都市では男性の育児休業を率先して取得できる余裕がある巨大企業はざらには存在しないでしょうし、育児休業に対する認識が高くはないのが現実でしょう。実際、「義務化」はまだ先のことだと思います。まずは、男性の育児休業取得を「常識化」するのが先決となります。そこで推進役として期待されるのが、地方の「優良企業(産業)」である行政機関(県庁や市役所)ということになるのだと思います。広島県では、湯崎英彦知事が2010年に、育児休業を取得し、「イクメン首長」として話題となりました。地方の場合、行政機関が自ら、育児休業取得のモデルケースを示していけば、民間企業が実行しやすいものになると思います。週休2日制は今や、ほぼ当たり前のこととなっています。土曜の午前中だけ出勤する「半ドン」という言葉は、もはや死語です。そのように、男性の育児休業取得も、週休2日制ぐらい「当たり前」のことにできると思いますし、危機的な少子化に直面しているからには、「当たり前」のことにしないといけないのです。
最後になりましたが、育児休業取得に理解を示してくれた読売新聞社の皆様、特に、抜けた穴を埋めていただいた職場の方々には、感謝の気持ちを申し上げたいと思います。そのような貴重な経験をさせていただいたからこそ、強い信念を持って、育児休業を取得促進、ひいては、少子化対策に尽力して、社会に還元していきたいと思っています。